大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪高等裁判所 昭和34年(く)1号 決定

少年 K(昭和一七・九・一三生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の要旨は、(1)少年の生年月日が昭和一七年九月一三日となつているのは、小学校就学の時期を誤つたところから便宜そのようにしたものであつて、右は誤であり実際は昭和一八年九月一三日である。(2)原裁判所は本件審判の際保護者(実父)に一言の質問もなさず、その意見も聞かないで少年院送致の決定を言渡した。(3)少年は現在全く改心し決して罪を犯さないことを誓つているのであるから、少年の将来を考慮して短期間でも試験観察に附せらるべきであるというのである。

よつて案ずるに(1)の点については少年の生年月日がたとえ主張のとおり誤であつたとしても、そのことによつては何ら原決定に抗告申立の理由たる法令の違反、事実の誤認又は処分の不当があるものとは思われない。(2)の点については少年審判規則によれば保護者は審判の席において裁判官の許可を得て意見を述べることができる(同規則第三〇条)のであるが、裁判官が保護者に意見の陳述を促したり、その意見を聞かねばならない旨の規定はないので、所論のように保護処分の決定にあたり質問、意見がなされなくても、このことは毫も法令に違反したものではないし、又その他の上記抗告申立理由にもあたらない。(3)の点については本件犯行の回数、態様、少年の性格、家庭環境殊にその非行処分歴等一件記録に現われた諸般の情状に徴するときは、少年を中等少年院に送致することとした原決定は何ら不当ではなく、この際なお所論のように試験観察に附すべきものとも思われない。

以上のとおり各論旨はいづれも理由がないので、少年法第三三条少年審判規則第五〇条に従い本件抗告を棄却することとして主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 山本武 裁判官 三木良雄 裁判官 坪倉一郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例